Gut Frailty
腸の虚弱「ガットフレイル」を、食物繊維から考える
「フレイル」は、心身が弱ってくる状態を指す言葉です。これを腸に当てはめた「ガットフレイル」という考え方が、腸内細菌研究の中から出てきました。むずかしい言葉ですが、要は「腸も、年齢や生活で弱ってくる」という話です。
まず言うと
ガットフレイルは、腸が弱ってくる状態をとらえるための考え方です。特別な治療より、食物繊維を土台にした毎日の食事、身体活動、人とのつながりで、腸をいたわっていく——という向き合い方です。まずは今日の食物繊維を見える化するところから始めれば十分です。
今のところ分かっていること
腸内細菌研究が専門の内藤裕二先生(京都府立医科大学教授)は、腸(ガット)が弱ってくる状態を「ガットフレイル」と名づけ、あらゆる世代の健康を胃腸への対策からめざす考え方を示しています。
腸には100兆個ともいわれる腸内細菌がすみ、その集まりは腸内フローラと呼ばれます。内藤先生のチームは、2000人近い日本人の腸内細菌がA〜Eの5タイプ(エンテロタイプ)に分かれ、食生活の傾向と関係することを報告しています。
食物繊維をエサにして腸内細菌がつくる酪酸などの短鎖脂肪酸が注目されており、内藤先生は、酪酸をつくる菌が少ない人ほど感染症で入院・死亡する率が高いという研究も紹介しています(免疫との関連が研究されている段階です)。
フレイルの予防では、「栄養」「身体活動」「社会参加」の3つが柱とされます。腸についても、食物繊維を土台に、体を動かすことや誰かと食べることが合わせて大切だと考えられています。
目安
- 「ガットフレイル」は、腸の虚弱をとらえる新しい考え方です
- カギは腸内細菌で、そのエサになる食物繊維が土台になります
- 栄養・身体活動・社会参加(誰かと食べる)の3つが柱とされます
- 医療診断ではなく、腸をいたわる入口として扱います
今日の小ネタ
「腸が弱る」と聞くと不安ですが、できることはシンプルです。菌のエサになる食物繊維を、いろいろな植物性食品から少しずつ。まずはそこからです。
勘違いメモ
ガットフレイルは、特定の食品やサプリで一気に治すものではありません。日々の食物繊維と生活習慣を、少しずつ腸にやさしい方へ寄せていく考え方です。
まだ言い切れないこと
ガットフレイルや腸内細菌のタイプで、将来の健康を断定できるわけではありません。個人差が大きい分野です。
食物繊維を増やせば病気を防げる、と言い切れるものではありません。便秘や疾患との関連は研究段階で、因果を確定するものではありません。
腸内細菌のタイプは、検査で優劣を決めるものではなく、食生活を振り返る参考として扱います。
食卓でやるなら
- まず今日の食物繊維を見える化し、総量が1日およそ25gに近づいているかを見る。
- 菌のエサになりやすい発酵性食物繊維(もち麦・海藻・豆・きのこ・根菜)を、種類を分けて少しずつ足す。
- 主食を1食だけでも「茶色いもの」(麦ごはん・玄米・全粒粉)に代える。
- 食事だけでなく、軽い運動や、誰かと一緒に食べる機会も腸活の一部として大切にする。
- 便の状態は、色・においだけでなく形(バナナ状が目安)も、流す前に軽く確認する。
気をつけたいこと
- 便秘や下痢が続く、体重が減る、握力や歩く速さが落ちてきた、といったときは、ガットフレイルと自己判断せず、医療者に相談してください。
- 食物繊維を急に増やすと、お腹の張りやガスが出ることがあります。少量から試してください。
- 塩分・砂糖・加工肉のとりすぎは、食物繊維とは別の軸で控えめにする注意点として挙げられています。
今日の一手
今日の食事を計算機に入れて、食物繊維の総量を見てみる。足りなければ、もち麦・海藻・豆・きのこのどれかを1つ足す。
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